グリーフ/グリーフケア

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グリーフとは

グリーフとは、直訳すれば「深い悲しみ」や「悲嘆」を意味する言葉で、大切な人を失ったときに起こる身体上・精神上の変化を指します。

死別はもちろんのこと、離婚などによって関係がきれるとき、引越しで慣れ親しんだ場所から離れるとき、職を失くしたとき、ペットが死んだときなど、さまざまな状況で私たちはグリーフを経験します。

グリーフは喪失に対する自然な反応で、誰にでもいつかは起こることです。

グリーフの症状

心(精神)的な反応

長期にわたる、「思慕」の情を核に、感情の麻痺、怒り、恐怖に似た不安を感じる、孤独、寂しさ、やるせなさ、罪悪感、自責感、無力感などが症状として表れます。

身体的な反応

睡眠障害、食欲障害、体力の低下、健康感の低下、疲労感、頭痛、肩こり、めまい、動悸、胃腸不調、便秘、下痢、血圧の上昇、白髪の急増を感じる、自律神経失調症、体重減少、免疫機能低下などの身体の違和感、疲労感や不調を覚えます。

日常生活や行動の変化

ぼんやりする、涙があふれてくる、多くの「なぜ」「どうしよう」の答えを求められ、死別をきっかけとした反応性の「うつ」により引きこもる、落ち着きがなく なる、より動き回って仕事をしようとする、故人の所有物、ゆかりのものは一時回避したい思いにとらわれますが、時が経つにつれ、いとおしむようになるなど

グリーフには以上のような様々な症状があります。理由もなく泣き出す、空しくて何事もどうでもよくなる、むやみに忙しく立ち回るようになる、自分にも周囲にも怒りっぽくなる、眠れない。生前にしてあげられなかったことを後悔して罪悪感をおぼえたり、人生とは、死とはといった問いを無限に繰り返したりすることもあります。

症状は人それぞれで、強く出る人もいれば、周囲からはほとんどわからない人もいます。長く続く場合もあれば、短期間で終わる場合もあります。

グリーフケアとは

グリーフケアをそのまま訳すと「深い悲しみや悲観に対する世話」ということになります。

人が大切な人を亡くしてから立ち直るまでには、12にもおよぶ行程をたどるとしている専門家もいるほど、大変な時期です。

そのような時期だからこそ、周囲はその行程を乗り越えていけるよう、継続的にサポートしていくことが求められます。

日本でグリーフケアアドバイザーを養成している「日本グリーフケア協会」では、グリーフケアについて、「喪失と立ち直りという二つの間で揺れ動き、不安定な状態となった人にさりげなく寄り添い、援助すること」と定義しています。

大切な人を亡くすという深い喪失感と、悲しみを乗り越えなくてはという思い。

2つの思いの間で揺れ動き、不安定になりながらも様々な行程を経て、悲しみを乗り越えられるまで、サポートすること。

それが、グリーフケアといえます。

グリーフケアの歴史

グリーフケアは、1960年代に欧米で提唱され、日本においても1970年代頃より研究され始めました。

研究された背景には、医療の進歩に伴う平均寿命の延長および、核家族化・非婚化に伴う家族の在り方の変化などがあると考えられています。

日本においてグリーフとグリーフケアが世に広く知られるようになった契機は、 2005年4月に起きたJR西日本の福知山線脱線事故でした。不条理な死に多くの人々が直面しました。「複雑性悲嘆」ともいわれる重いグリーフ症状の事故遺族らも少なくなく、ケアのため聖トマス大学(兵庫県尼崎市)にグリーフ専門の研究機関「グリーフケア研究所」が2009年に設立されました(翌年、上智大学に移管)。グリーフに対する社会的理解を広めることや、ケアにあたる人材育成などに力を入れています。

 また、年間3万人超もの自殺者が続いたことを受け、国は2006年「自殺対策基本法」を策定しました。これを受け、自殺・自殺未遂した人の親族らへのグリーフケアも重要な施策として位置づけられ、対策が進められています。東日本大震災を機に宗教者によるグリーフケアも注目され、実践する宗教者が増えています。2012年に東北大学で臨床宗教師を養成する講座が開設され、その後他大学にも広がりをみせ、2016年には「日本臨床宗教師会」が設立されています。

日本では病気や事故以外にも、年間3万人を超える自殺者や、東日本大震災などの自然災害など、様々な理由で大切な人を亡くす方がいます。

よってたとえグリーフケアの専門家でなくても、グリーフケアとはどういったものかを知っておくことは、重要なことといえます。

グリーフケアの方法

故人について語り合う

亡くなった方についてあれこれ話すことについて、故人に対しての悲しみがよみがえってくるため、良くないと感じた方がいらっしゃるかもしれません。

悲しみという感情は、外に表出することで少しずつ、乗り越えることができるとされています。

よって故人との思い出を語ったり、故人へ宛てて手紙や文章を書いてみることは、自分の悲しいという感情を外へ出すという意味で、非常に有効な方法だと言えるのです。

また、故人の遺品を整理するというのも、故人との思い出を振り返り、悲しい感情を乗り越える一歩として大切です。

思いを吐き出す

大切な人が亡くなったことに対し、受け入れる行程において人は「自分があの時、もっとこうしていれば…」という後悔や、「なんで突然いなくなってしまったの?」という怒りなど、悲しみ以外の様々な感情が複雑に入り乱れるとされています。

こうした思いを思い切り外へ吐き出すということも、グリーフケアとして有効です。

周囲にいる人へ直接自分の思いを吐き出してもらう、という方法もありますが、中にはたとえ身近な人であっても、自分の思いを吐き出すことに対して、戸惑いを感じる方もいます。

そうした方へお勧めなのが、地域や病院などで開かれている、家族や遺族の会へ参加することです。

同じような境遇で大切な人を亡くした方同士、お互いの気持ちがわかるからこそ、自分の思いを素直に吐き出すことができ、それが悲しみを乗り越える第一歩となるのです。

セレモニーを行う

お通夜や葬儀など、故人とお別れする儀式を行うことは、それ自体がグリーフケアといえます。

遺品整理も、グリーフケアのひとつともいえるでしょう。

こうした儀式を通して、その方が亡くなったということを現実として受け止めることができるからです。

セレモニーを行うにあたって大切なのは、感情を押し殺さず、素直に自分の感情を吐き出すことです。

周囲の視線を気にするあまり、感情を押し殺してしまうことはそれだけ悲しみを乗り越えることが難しくなってしまうのです。

よって周囲は素直に自分の感情を吐き出せるよう、サポートしてあげるとよいでしょう。

グリーフケアアドバイザー、カウンセラーに相談する

第3者が介入して、専門的に取り組む方が効果的なことがあります。

また、同じような状況でなくなった身内を持つグループや団体などがあり、同じ境遇の人と寄り添い、その経験を共有するという方法もあります。

まとめ

グリーフを乗り越える近道はありません。自分なりに一日一日を乗り越えていくことだけです。そのためにはまずグリーフというものの本質を理解し、受けとめることが大切です。また、時には専門家の助けを借りることも重要です。

アメリカでよく使われる言葉で、このようなフレーズがあります。

“There is always a light at the end of the tunnel.”

トンネルの先には必ず明かりが見える、という意味です。グリーフはつらく長い道のりですが、その先には必ずあかるい光があるはずです。 

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