香典
香典とは
香典の意味
「香典」とは、線香や花の代わりに故人の霊前に供える金品のことで、香料とも言います。
「香」の字は文字通りお香を意味し、「典」の字はお供えを意味します。
お香典は香典袋(不祝儀袋)にいれてお渡しします。
急な不幸で出費があるということへの、助け合いの意味も込められています。
香典の歴史
「香典」は、かつて「香奠」と表記していました。「奠」とはお供え物のことを指し、香を仏様に捧げるという意味の言葉です。
この言葉が指すように、お香を花や灯りとともに供えて死者を慰めることが香典でした。ところが、昔、香は高級品で、一般庶民にはなかなか手に入る代物ではありませんでした。そこで、遺族や近所の人々がお香の代わりに米や野菜などを持ち寄ってお供えをしたのがそもそもの起源なのです。
香典はお供えでもあり、死者を慰霊するものでもあり、また喪家の負担を集落や親族で軽減しようという共同体の結束のあらわれでもありました。
香典袋はどこで買えるか
もっとも身近なのはコンビニで、たいていは取り扱っています。強いて気をつけるとすれば、斎場(お葬式を行う場所)の近くだと売切れてしまう可能性があることくらいです。続いて身近なのは文房具店でしょうか。専門店でなくても、スーパーや書店の文房具コーナーで扱っていることも多いので、いざという時のためにあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
お葬式に参列する際にお香典袋を忘れてしまったり、うっかり汚損してしまう場合もあるかもしれません。その場合は斎場のスタッフに相談してみましょう。売店や受付で購入できる可能性が高いです。
その他に扱っている可能性があるのは駅の売店や仏具店、紳士服量販店などが考えられます。
香典袋の書き方
香典袋は、表袋(外袋もしくは外包み)の上段に表書き、下段に名前、内袋に住所を書きます。
香典袋の書き方は宗教によって違う
書き方は、宗教や宗派によって、入れる金額は自分との関係性(遺族側、友人、勤務先の同僚や上司もしくは部下、取引先の関係者等)によって異なります。
香典金額の相場
現在、香典の平均的な相場として、友人なら5000円から1万円、とくに親しい間柄なら3万円ほど包むのが一般的なようです。地域によっては、自分の親戚の葬儀の際にいただいた同額を返すというしきたりもあります。
香典袋は薄墨
書く際は、毛筆または筆ペンを使って「薄墨」で書くことが基本です。
薄墨とは、その名の通り薄い墨を用いたもので、薄墨は故人に対して悲しみを表すと言われています。
最近では弔事用に薄墨の筆ペンやサインペンも市販されています。
香典袋は、ボールペンや鉛筆で表書き記すことはマナー違反と捉えられますが、中袋は、毛筆ではなく、黒いペンで書いても問題ありません。
受け取った人が読みやすく正しく書くよう配慮しましょう。
宗教・宗派による書き方の違い
仏教の場合
香典を渡す相手が仏教徒の場合は、仏式のルールで表書きを施します。水引き上部の中央に、「御香典」または「御仏前」と縦に記載しましょう。この2つのほか、「御霊前」「御香料」「御弔料」といった言葉を記入する場合もあります。
一般的には上の通りで問題ありませんが、「御仏前」は通常四十九日のあとに使われる言葉です。絶対にダメ、といった決まりはないものの、「御仏前」以外を使用したほうが無難でしょう。ただし、仏式のなかでも浄土真宗に限っては「御香典」などではなく「御仏前」と記載します。
また、香典袋に蓮(ハス)の花が描かれているものを見たことがある方も多いのではないでしょうか。これは仏教のために描かれているもので、仏式のみで使用される香典袋なのです。
神道の場合
日本の伝統的な信仰である神道の場合は、「御榊料」「御玉串料」「御神饌料」などの言葉があります。仏式でも使われる「御霊前」でも問題ありませんが、神道とわかっているのであれば神式で記入したほうが良いでしょう。
このとき、蓮の花が描かれた香典袋を選ばないよう注意が必要です。香典袋を購入する機会も多くないため、適したものがわからずマナー違反となってしまう可能性もあります。誤って仏式の香典袋を選ばないよう、確認するようにしましょう。
キリスト教の場合
キリスト教の場合はよく知られているルールと違い、香典のことを「御花料(おはなりょう)」といいます。表書きの言葉はプロテスタント・カトリックでそれぞれ変わりますが、どちらか確信がない場合は「御花料」を使用しましょう。そのほか、プロテスタントは「忌慰料」、カトリックでは「御ミサ料」といった言葉も用いられます。
香典袋はキリスト教徒用のものを選びます。プロテスタントは十字架、カトリックはユリの花か十字架が描かれたものが適切です。店頭などで見当たらない場合は、白色無地の封筒を使用しても問題ありません。
宗教がわからない場合
相手の宗教がわからない、または無宗教といったときには、原則として「御霊前」と記入します。
ただし、浄土真宗とキリスト教(プロテスタント)の場合マナー違反となり失礼にあたってしまうので要注意です。少なからずそれらの可能性があるのであれば、宗派を問わない「御香典」もしくは「御香奠」を使用しましょう。
表書きの言葉が不適切だったからといって、香典を受け取ってもらえないということはまずありません。しかし、宗教は個人を尊重するものでもあるため、可能であれば香典を用意する前に確認しておいたほうが良いでしょう。
香典を渡す時の流れとマナー
受付で香典を渡す場合
一般的に、香典は受付で記帳する際に渡します。このとき、香典袋を裸の状態で取り出すのはマナー上不適切です。弔用または慶弔両用の袱紗(ふくさ)であらかじめ包んでおきます。
渡すときに香典袋を取り出して袱紗をたたみ、自分から見て正面となるように持った香典袋の下に重ねます。受付台にスペースがある場合は、たたんだ袱紗をその上に置いても問題ありません。
相手の手に渡す直前に、相手から見て正面になるよう回転させます。言葉はなくとも失礼になりませんが、お悔みの一言を添えても良いでしょう。
受付がない場合
受付が設けられていない場合は、喪主または遺族に手渡します。渡し方は受付の方法と同じで問題ありませんが、お悔みの言葉は必ず添えるようにしましょう。具体的な例としては、「この度はご愁傷さまです」「お悔やみ申し上げます」などです。定型文ですが、あくまでも短い言葉で終わらせ、いつもより小さな声で細々と述べるのがマナーです。
また、遺族ではなく御霊前に直接供える場合もあります。その際は、表をこちら側に向けるかたちで供えましょう。
香典を預かっている場合
親しい友人や家族の場合、代理として香典を預かるのはマナー違反とされています。しかし、それほど親しくない間柄であればこの限りではありません。他人から香典を預かったときは、受付でその旨を伝えます。一連の渡し方は通常と同様で、代理であってもお悔みの言葉を添えましょう。
香典のほかに伝言などもある場合には、受付ではなく喪主や遺族に直接伝えるのが理想です。それが望ましくない状況であれば内容をメモに残し、自分が代理人であること、相手から伝言を預かっていることも記載して受付人に渡しましょう。
まとめ
香典袋の種類、書き方、香典の渡し方、金額など、葬儀・香典のマナーを知らないと失礼にあたることもあります。
社会人としては私的なつながりだけでなく、仕事上でお世話になった方とのお別れでも香典を出すこともあるので、お付き合いの関係性でも金額や配慮することは変わります。